
2026/10/20
人材育成支援・研修事業を専門とする大阪経営クリニック株式会社の三好です。前回は、1on1で「何を話すか」、そして「続けること」の大切さをお伝えしました。1on1は本来、回数を重ねるほど信頼関係が深まっていくものですが、その効果を実感できるかどうかは、日々のコミュニケーションに大きく影響されます。今回は、面談の効果を左右する「信頼関係」の土台づくりについて解説します。
信頼関係という土台がないと、どうなるのでしょうか。話すテーマを用意し、定期的に1on1を実施できていても、「最近どう?」「大丈夫です」で会話が止まり、上司も部下も、なんとなくもやもやした気持ちのまま面談が終わってしまう—そのような状態に陥ってしまうことも珍しくありません。
原因は話し方のテクニックではなく、その手前にある「信頼関係」に他なりません。信頼関係の土台がなければ、いくら「話しやすいテーマ」を用意しても、本音を引き出すことはできないのです。
「本当のことを言ったら評価が下がるかもしれない」「以前、正直に話したら不利に扱われた」—こうした不安や過去の経験があると、無難な回答に終始してしまうのは、ある意味当然のことです。安心して本音を話せる関係性があってはじめて、部下は本音を口にできるようになります。
また意外な盲点として、上司が「ちゃんと聴けていない」という課題もあります。「部下のための面談」とわかっていても、いざ始めると気づけば上司ばかり話している、というケースは少なくありません。「聴く:話す」の割合は7:3程度が良いとされますが、実際には8:2くらいを意識しないと、つい自分の体験談を語ったり、意見を求められる前に自分の考えを話してしまったりしがちです。こうなると部下からすれば「上司の話を聴かされる時間」という認識になり、本音を話そうという気持ちも薄れてしまいます。
信頼関係が築けていれば、部下は困ったときに早めに相談してくれますし、その結果、突然の離職も防ぐことができるかもしれません。信頼関係がない状態では、いくら面談を重ねても、こうした効果は十分に得られないのです。
では、信頼関係はどうやって築けばよいのでしょうか。信頼関係は面談の場だけで一気に構築されるものではなく、日々のちょっとした行動の積み重ねから生まれていきます。
朝のあいさつに一言添える、忙しそうにしていたら「大丈夫?」と気にかける、以前話していたことを覚えていて「あれ、どうなった?」と聞いてみる。こうした日常のやり取りひとつひとつが、「自分のことを見てくれている」という安心感につながっていきます。
逆に、月1回の面談の時だけ急に踏み込んだ話をしようとしても、部下からすれば唐突に感じられ、かえって身構えさせてしまうこともあります。面談はあくまで信頼関係を確認・深める場であり、信頼関係そのものは、日常の中でコツコツと育てていくものだと捉えておきましょう。
日々のコミュニケーションでは、上司自身が自己開示することも効果的です。ただし、面談の場と同じく、自慢話や成功体験ばかりを語ってしまうと逆効果。むしろ、ちょっとした失敗談やプライベートの一面が垣間見えるような話のほうが、「この人も同じ人間なんだ」という親近感につながり、部下も心を開きやすくなります。
上司の都合で面談の日程を簡単に変更したり、「今月は忙しいから」と度々キャンセルしたりすると、部下は「自分との面談は、それほど重要視されていないのか」と感じてしまいます。緊急のトラブル対応など、明らかに優先すべき事情がある場合は別ですが、基本的には安易に約束を破ってはいけません。
もし約束を守らない部下がいたら、あなた自身も「大事なことを任せられるかな」と感じてしまうのではないでしょうか。それは、上司と部下の立場が逆でも同じことなのです。
今回お伝えしたポイントは、「聴く姿勢を持つこと」、そして「約束を守ること」です。特別なテクニックがなくても、こうした小さな積み重ねが、部下との信頼関係をつくっていきます。
次回は、部下の育成に欠かせない「叱り方」のポイントについて解説します。