
2026/10/07
個人事業主が株式会社や合同会社などの法人を設立し、それまで個人で営んできた事業を法人へ引き継ぐことを「法人成り」といいます。税負担の軽減や信用力の向上が期待できる一方、設立費用や社会保険の負担などが生じる点には注意が必要です。
この記事では、大阪信用金庫の運営するメディア「だいしんネットAKINAI」が、法人成りのメリットとデメリットをそれぞれ3つ紹介します。
法人成りの意味や手続きの流れについてはこちらの記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
まずは、所得にかかる税負担・社会的な信用・消費税の3つの観点からメリットを見ていきましょう。

個人事業主にかかる所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税です。一方、法人にかかる法人税などは所得税とは税率の仕組みが異なるため、利益の水準によっては、法人成りによって税負担を抑えられる可能性があります。
法人成り後は、一定の要件を満たせば役員報酬を法人の損金に算入でき、経営者個人としては給与所得控除を受けられます。法人に残す利益と役員報酬に分けることで、所得を分散できる点も特徴です。
ただし、役員報酬を支給すれば必ず税負担の軽減につながるわけではありません。役員報酬の金額、法人に残す利益、社会保険料などを踏まえ、法人と個人の負担を合わせて試算する必要があります。
法人を設立すると、商号や本店所在地、代表者の氏名など、取引上重要な情報が登記されます。取引先は登記事項証明書などでこれらの情報を確認できるため、契約の相手方や責任の所在が明確になります。
このように、会社の基本情報を客観的に確認できることから、法人は個人事業に比べて取引上の信用を得やすい傾向があります。
取引先の社内基準によっては、契約相手を法人に限定している場合もあります。法人成りをきっかけに、新たな企業との取引や業務提携につながることもあるでしょう。
ただし、法人を設立しただけで信用が保証されるわけではありません。実際の取引では、事業実績や財務状況、支払い能力なども含めて判断されます。
消費税の納税義務の有無は、原則として前々事業年度の課税売上高をもとに判定されます。新設法人には基準となる前々事業年度がないため、設立1期目と2期目は、消費税の納税義務が免除される(消費税が免税となる)場合があります。個人事業で消費税を納めていた場合でも、法人成り後の法人は別の事業者として判定されるためです。
ただし、次のような場合は消費税の納税義務が免除されません。
・設立1期目または2期目の開始日時点で、資本金が1,000万円以上である
・一定の大規模法人などに支配される「特定新規設立法人」に該当する
・適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている
なお、設立2期目は、原則として「特定期間」にあたる前事業年度の前半6か月間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となりますが、課税売上高に代えて給与等支払額で判定することもできます。
消費税の納税義務が免除される対象となるかどうかは、資本金や売上高、出資関係、インボイス制度への対応状況などによって異なります。法人成りの時期を決める前に、税理士などの専門家へ確認しておきましょう。
法人成りにはメリットがある一方、個人事業に比べて費用や手続きが増える点に注意が必要です。
会社(法人)の設立には、登録免許税などの費用がかかります。株式会社の場合は、原則として公証役場で定款の認証を受ける必要があり、その手数料も必要です。合同会社の場合は定款認証が不要ですが、登録免許税などの設立費用は必要です。
設立後も、会計処理や税務申告が複雑になりやすく、税理士へ依頼する場合は顧問料などの負担が生じます。登記事項に変更があった場合の変更登記や、許認可が必要な事業では更新手続きなども必要です。
会社(法人)は代表者一人だけの場合を含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。保険料は会社(法人)と加入者が原則として折半するため、従業員が増えるほど会社(法人)の負担も大きくなります。
そのため、資金繰りを考える際は、給与だけでなく会社(法人)が負担する保険料も見込んでおかなければなりません。
一方で、社会保険への加入は従業員が安心して働ける環境づくりにもつながります。費用負担だけでなく、採用や人材定着への効果も含めて検討しましょう。
法人住民税には、法人税額に応じて課される部分のほか、資本金や従業員数などをもとに計算される「均等割」があります。均等割は、赤字で法人税がかからない場合でも、原則として納付しなければなりません。
利益が安定しない段階で法人成りすると、赤字の年度であっても、税金や社会保険料、決算にかかる費用など、一定の負担が続く点に注意が必要です。
法人成りには、税負担の軽減や信用力の向上といったメリットがある反面、会社の設立・維持にかかる費用や社会保険料の負担といったデメリットもあります。片方の側面だけを見て判断すると、あとで思わぬ負担にもなりかねません。
事業の利益や今後の見通しなどを踏まえ、必要に応じて税理士などの専門家に相談しながら、自身の事業に適したタイミングを見極めることが大切です。
大阪信用金庫が運営するシェアオフィスでは、創業から法人成りのご相談、その後の事業展開のお悩みまで、ワンストップでお応えしています。法人成りをするかどうかの判断に迷ったときは、お気軽にご相談ください。

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