
記事提供:三井住友トラスト不動産株式会社

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。
(情報提供:株式会社LIFULL HOME’S総合研究所・監修/三井住友トラスト不動産 企画部)
今回は、最近よく耳にするようになった“家じまい”をテーマに、日本の伝統的な家族制度の変容と、少子化・高齢化が進む世相を反映する住宅事情について考えます。
昨年、いわゆる“団塊の世代”=第2次世界大戦の終戦直後の1947~1949年(昭和22~24年)に生まれた第一次ベビーブーマーが2025年に全員75歳以上になり、後期高齢者と言われる年齢に達したことを契機として、主な相続財産である土地・建物を“団塊のジュニア世代”がどのように継承するのか、またしないのかということに関心が高まっていて、これを称して“大相続時代の幕開け”と言われるようになりました。
また、団塊の世代の総数は約806万人、2025年時点でも依然600万人のパイを維持しており、65歳以上の高齢者3,600万人の16.7%を占めますから、この巨大な人口のパイが後期高齢者になることは“超高齢化社会”の本格的な到来であり、このことによって“2025年問題”が顕在化するとされています。
2025年問題とは、“団塊の世代”が後期高齢者になったことを契機とする、
① 医療&介護、福祉など専ら高齢者が利用するサービスに対する需要の急増懸念
② 労働人口の相対的な減少による経済の停滞
③ 社会保障費がさらに増大し現役世代の負担が増えることに対する不安
などを示す言葉ですが、これらの指摘には、悲鳴を上げ始めている日本の相互扶助制度を早急に設計し直さなければならないという危機感が表れていると言えるでしょう。
実際に2月の衆議院議員選挙では、「消費税の減税・廃止」ではなく、「現役世代の負担軽減(社会保険料の抑制)」と「高齢者の応分負担」を前面に出した主張を展開した政党が現役世代からの支持を拡大したという事実も、2025年問題が自分事として乗り越えなければならない大きな課題であることを浮き彫りにしています。
住宅分野における2025年問題は、全国で900万戸超とされる空き家の更なる増加に集約されます。
空き家は親世代の死亡や介護施設への入居によって発生し、次にその家に住まない子世代が所有者として相続することによって顕在化します。
これは、実家を相続しても土地面積が300㎡(約100坪)以内であれば、小規模宅地等の特例によって土地評価額を最大80%減額※1できること、また空き家のままにしておいても住宅用地の特例によって固定資産税の課税標準額が1/6(200㎡以下の部分)に軽減されること、によって結果的に住宅(=この場合は空き家)税制の優遇措置が、“空き家が空き家のまま当面守られる”状況を生み出しているからです。
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この小規模宅地等の特例を受けるためには、面積以外に「誰が相続するか」という要件が非常に重要になります。
例えば、別居している子が相続する場合、すでに自分の持ち家に住んでいるような場合、原則としてこの特例は使えず、実家を相続しても土地評価額は100%そのまま課税対象になります。
つまり、核家族化=親世帯と子世帯が物理的に遠く離れて住居を持ち独立して生活する家族形態、の進展によって、実家に戻ることができない環境で生活している子世帯が圧倒的多数に上っていることが空き家増加の背景にあり、住まないのではなく事実上住めない状況を、税制がサポートしているとも言えます。
ただし、仮に実家を相続した子が空き家を手入れすることなくそのまま放置し荒れるままに任せていると、行政から「特定空き家」もしくは「管理不全空き家」に指定される可能性が高まります。
指定されると、住宅用地の特例の適用対象外となりますから、固定資産税の減免措置が失われて最大従前課税額の6倍の金額が徴収されることにもなりかねません。
したがって、そう遠くない将来、実家を相続させる、あるいはする可能性がある場合、その活用方法を検討することと並行して“出口”を売却にするか否かを考えておく必要があるのですが。
以下、筆者が所属するLIFULL HOME’Sで調査した売却依頼の動向について確認し、“家じまい”の現在を考えます。
まずは“家じまい”を検討する件数の確認です。
“いくらくらいで売れるものなのか知りたい”というLIFULL HOME’Sに寄せられる売却を前提とした住宅の査定依頼は、下記のグラフの通り2022年を100とすると、いずれのエリアでも高い伸びを示しており、過疎化が進む東北地方では2.74倍、九州・沖縄でも2.57倍に急増しています。
最も伸びが少ない首都圏でも1.87倍ですから、相続した実家の利用方法を検討するにあたって、住み続けるか賃貸に供するかという選択よりも売却することを選ぶケースが急激に増えていることがわかります。

やはり、親世代が長年居住し、子世帯(=自分)が子供の頃から学生時代を過ごした思い出のある家ですから、築年数が相応に経過している物件が“家じまい”の対象になっています。
最も多いのは築41~50年の43.8%、次いで築31~40年の24.4%という構成で、築31年以上の物件シェアは82.7%に達しますから、リフォームやリノベーションして住み続けるにも改修コストが多額になる可能性が高く、そのまま売却することを前提とするケースが多いことが想定されます。
ただし、築20年以内の物件も5.4%ありますから、20物件に1物件程度は“売却適齢物件”でもあり、近年の資産インフレ期では予想よりも高額で売却できる可能性があることも売却に前向きな一因となっているようです。
また、物件の種別では66.5%と圧倒的多数が戸建住宅ですが、マンションも25.1%と一定のシェアを占めており、核家族の形態および居住スタイルが実家=郊外・地方圏にある戸建住宅という固定概念に近いイメージだけではないことが窺えます。

相続を契機として物件を売却したいと考える所有者は、2024年で築31年以上が8割を超える状況から1年以内を希望するケースが最も多く28.9%と例年3割程度のシェアを占めていますが、次いで早急に=とにかく早く“家じまい”したいと考えている所有者も25%前後に達しており、当然のことですが、なるべく早く決着して資産整理することを希望されています。
一方で、立地&交通条件が良好な物件に限られますが、近年の中古住宅の価格上昇(資産インフレ)を前提に、希望額で売れるまで待つ=1年以上先でも構わないというケースも徐々にシェアが拡大しており、売却のタイミングについては“より早く”が最優先ながら、“より高く”という意識で臨んでいる所有者も一定数いらっしゃるようです。

最近、実家の売却が“家じまい”と言われ、一般的な住宅の売却と区別されるようになったのは、自分が過ごした思い出のある家を心情的に簡単には売却できないこと、また思い出の品や遺品もたくさんあって処分するには時間も手間も親族間の調整も必要なこと、などが主な理由です。
背景には核家族化の拡大や単身世帯の増加といった家族構成の変化があり、生計を共にしていれば法律的・経済的な問題は発生しにくいのですが、物理的に別のエリアに居住していると、相続しても自己居住もしくは賃貸などに活用することが想定しにくいため、相続後に売却を相談・依頼するケースが増えているのです。
国の調査では、空き家が既に全国で900万戸に達し、住宅の総戸数に占める割合も13.8%と30年間で約2倍に増加していて都市圏でも問題化し始めています。
2024年から相続不動産の登記義務化、空き家の流通促進を目的とした仲介手数料の上限引き上げなどが制度として始まっていますが、対策は端緒についたばかりです。
空き家のまま放置すると、シナリオとしては固定資産税が最大6倍に課税される可能性があること、相続空き家の3,000万円特別控除が活用できなくなること(相続後3年以内に対応する必要があります)などを考慮して、実家を空き家のまま放置しないために具体的にどのように行動するのが良いかを、予め=親世帯と相談できるうちに話し合っておくことが極めて重要なポイントになることを意識しておきましょう。

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